2017/07/08

Being a staff at a local bike shop.

チャリ屋になる。
というのは自転車を趣味とする学生は誰しも考えた事があると思います。

何を隠そう、僕もそういった考え方を持っていて、自転車屋で働きはじめた時はわくわくしたものです。

昨年、1年半ほど勤めていた自転車販売店を退職しました。
その時に感じたコトは沢山あったわけですが、問題にならなさそうな範囲で色々残しておこうと思います。

以前、「自転車屋さんへのお手紙」というエントリーで一般人から見た自転車屋像を書き、「お店に喜んでもらえるお客さんになる方法」というエントリーで顧客像を描きました。この記事はショップスタッフ目線の3本目の記事となります。

ショップで働いて強く感じたのは、今後スポーツバイク専門店は2極化するのだろう。ということでした。”大型のディスカウント店舗”、"セレクトショップ的カルト風の小型店"の2つしか無くなっていくように思います。他はメーカー系のコンセプトストア化した、自動車でいうならば正規ディーラーのような店舗くらいでしょうか?
つまる所何が言いたいのかというと、店舗はユーザーによって既に大きな篩にかけられているということです。正直なところ、一つミスったら即終わりな店舗は殆ど無いものの(そんな店舗があったら普通に営業出来ませんね)ヤバい状況ってあるんだな。というのが率直な感想でした。

最も意外だったのは代理店が諸々しっかりしていたことでしょう。そして、予想通りだったのはショップ内のアレコレでした。

輪界の納期の読めなさ、唐突な値上げ/値下げ云々の話はショップ側として見ると全く不満が出るものではありません。綿密なコンタクトを取っていれば、不満は出ないと言い切れます。以前聞いていた状況とは180度違う状況であり、相当な勢いで改善されつつあるのだな。と感じました。
実際に、かなり多くの人材を他業界から引き抜いており、「前職は〜」のような話をしばしば耳に挟むことがありました。輪界は閉鎖的で同じ人間が複数の会社を渡り歩くことも多いようですが、国際的に見ても同じことが言えるので普通なのでしょう。自転車界隈はマニュアルがちゃんと整備されておらず、知識を持った人間が非常に貴重であるとも言えます。非常に興味深い事案を幾つか見ましたが、「厄介そう。」というのが率直な感想です。

というか、自転車業界はキャリア(こういう言い方は不適切かもしれませんが…)が理論と計算で入れるような場所では無いですね。意識の高いノンキャリが昔ながらのやり方とパワーでゴリゴリ動かしている感じでした。だーから台湾や中国のキャリアに支配されるんですよ。アホか。国内の知恵をもっと使えと。

ショップはショップで色々と苦しいですね。最近は定価で売りたいショップと、なるだけ安く買いたい消費者の意識が乖離しつつあるように思います。個人的に、この"定価で売るためには。"というのは本当に難しいことだと感じました。

実は、定価で商品を売るのは全く難しいことでは無いのです。
”実は、”という接頭辞をつける必要があるのか?というくらい簡単なことですが、これが出来ないんですね。な ぜ か 。

1、定価で売るためには、顧客満足度を上げる必要があります。

2、顧客満足度は商品と接客、2つの視点から考えることが出来ます。

3、商品そのもののベースは市販品である以上、根本的には変えられません。

3'、接客はセールスマン/ウーマン、セールスチームが一丸となって行うものです。

4、その為に戦略と一人ずつのジョブ振り&キャラクター分けが重要です。

自転車の販売で面白いな。と思ったのが、自動車販売とは性質が違う為、販売のアプローチが似て非なるものだな。ということでした。自転車は生活必需品ではありませんし、経費で落ちるものでも無いわけです。個人的に、接客につくときには自分が知っていて、最も気持ちが良いと感じるYANASEの営業スタイルを参考にしていましたが、顧客に合わせて細かくアレンジする必要がありました。

そして、定価販売とはどこまでを含むのでしょうか?自転車が箱に入って7分組という状態で届くことは周知の事実です。そして、その残り3割を組むことでその自転車が販売可能になるわけでは無く、一台1~3時間程度の時間をかけて各部の調整を行ってから初めて納車可能な状態になることも周知の事実でしょう。
しかし、クランクを外してBBを締めなおしたり、ヘッドパーツにグリスを追加したり、ホイールセンターを確認し、フレ取りを行ったり、その時にしばしば破損していることがあるリムテープを交換し、安い完成車に付属してくる粗悪なワイヤーをシマノのステンレス製のものに替えたり、どこまでやることが定価販売に含まれるのか。という問題があります。

例えば、ワイヤーなどの部品をバルクパッケージで購入すると、1台分の部品は1000円〜5000円くらいになると思います。僕はこれは販売価格(定価では無く)には含まれていない。と思っています。こういった新車時からのフルチューンナップは明確に別料金であるべきでしょう。そう考えると、こういったチューンナップを標準的に行っている店舗は車体を1割引で売っているのと同じ状態になります。

個人的には,
粗悪な部品や粗悪な状態で売った結果発生する表層化しないクレームが何よりも怖いと思っているので積極的に部品を交換していましたが、これに関してはやはりスタッフ間でも意見の分かれる所でした。もっとはっきり言うと、何年先を見据えるかによってその売り方は変わってくるでしょう。数年で店を畳む覚悟があるのであれば、値段を下げて不十分な調整で売って利益率を上げれば良いと思いますが、経営を安定させたいのであれば顧客にしっかりと説明してこの部分は別料金として貰うことが重要だと思いました。ワイヤー類をシマノ純正ワングレードアップするサービスとしてメニューに載せれば、一つの売りになるのかな。と。(その料金をサービスして顧客満足度を上げてもいいわけですしね)

そういうハード面の話も色々とありますが、ソフト面のケアが出来ていないということも強く意識しました。ライドイベントの開催はもちろん、技術講習会への参加など、技術者としてスキルを磨かなければいけないはずなのに、給料が発生しない為行く必要は無いからでしょうが、そういった講習会に参加する意味は無い。と豪語しながら90系統のFD、RDのワイヤー固定を思いっきり間違えるメカニックが存在したことは本当に衝撃的でした。(また、そういう人間ほど間違った突拍子もないことを自信ありげに豪語するので質が悪いんですよね。)
他にも色々あったわけですが、ひとえに金を出して良い人材を集めないから起きる諸々というのは連続して起こるわけです。

某ラボさんが他店の作業を色々指摘していましたが、雇われメカニックが真っ当な作業をするメリットが金銭的に無い世界なので、メンテナンスに自信の無い人は個人経営の真面目なお店に行くのがベストだと思います。

逆に、安く買いたいのであれば、量販店に行くのがベストだと思います。シーズンごとの価格競争という点ではとてもユーザーフレンドリーになるかな?と。

ただ、一つ留意しておかないといけないのは、自転車専門の人間(自転車が好きなだけのメンバー)だけで店を固めると色々終わるということでしょう。理論的に経済を把握している人間が自転車好きな人間の手綱を握り、適切なコントロールをすることが非常に重要です。このコントロールの塩梅が非常に難しいと感じました。
お互いがお互いのことを理解していない。と考えるのは古今東西どこでも聞く話ですが、相手を肯定して良い所を最大限使う。というチームマネジメントを行うことは本当に難しいですね。それが大きな会社になればなるほど難しい。と強く感じました。企業体となると

強い会社とは。を考える良い機会になったので非常に面白い経験が出来ました。と綺麗に〆ておきましょう。

あ、そうそう。本来発生するはずだった有給が、年間勤務日数160日(アルバイトで)超えていないと発生しないそうで、発生しなかった事も付け加えておきましょう。変なのかな?多分。

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